今までにツイートした本の感想(備忘録を兼ねて)
自己紹介的な意味もありますが、自分用の備忘録も兼ねています。
以下、古 → 新
『実践カルチュラルスタディーズ』メモ
— yuki (@yk17859713) 2017年1月23日
ソーカル事件とメタファー思考がもつ創発性の関係。異分野間の(強引ではあれ)交流によって生じる「理論」。科学がそれを告発するとしたら、科学性とは何か。
ウエルズ『タイム・マシン 他九篇』 (岩波文庫)
— yuki (@yk17859713) 2017年1月24日
「新加速剤」
加速剤で周りの時間が止まる、鈍足剤で自分の時間を引き伸ばす。相対的に時間をコントロール。世にも奇妙な物語的なオチを予想してたら、技術的可能性の明るいとこだけで終わって意外。
『聴衆の誕生』(中央公論新社、2012)
— yuki (@yk17859713) 2017年1月24日
「高級音楽と低俗音楽」
伝統的に音楽の特性とみられた、感性に訴えかける非合理的な側面は、19世紀の美学が追求した芸術の精神性の対極とされ、存在を正当化できなくなった。自己正当化のため、それに合わない音楽を「低級」として区分した。
山口昌男『本の神話学』(1977、中公文庫)
— yuki (@yk17859713) 2017年1月24日
「政治とその分身」
学生運動は街路を本来の都市機能から逸脱させ、全く異なる空間へと変貌させた。しかし空間を遮り「解放」することは、もはや象徴的に抵抗のみを表すものではなくなり、都市行政の一環として管理されるものとなった(ホコ天?)。
大理石像・デュランデ城悲歌 (岩波文庫)
— yuki (@yk17859713) 2017年1月25日
「大理石像」
理想の女性像(石像・化身)と現実の女性像(少女)の双方が、ころころ変身して現れるのは、それを見る主人公フローリオの視点と、昼/夜という二つの光が要因。歌声(聴覚)による誘惑を、一方で維持しつつ、他方最後に裏切るのは視覚。
マトゥラーナ/ヴァレーラ(1997)『知恵の樹』ちくま学芸文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年1月26日
確かにこれを読んだら「システムとしての社会」について考えたくなる。社会と言語の問題については開いて終わっている。この先は読者が問いを立てて探していく。「コレオグラフィーとしての社会」。
鶴見俊輔『文章心得帖 』(ちくま学芸文庫) 著者が実際「こう書いてきた」という体験の形で綴られる「いい文章」のコツ。「書かれなかったことにもその人の特性が出てくる」というのは至言。文章とは選択の結果に他ならず、その選択こそが文章を書いた人を表す。
— yuki (@yk17859713) 2017年1月26日
小林章夫『コーヒー・ハウス』(講談社学術文庫)、17-19世紀英国のコーヒーハウスは、政治・経済・ジャーナリズム・文学など、それぞれに集い、会話し、多彩な言説が紡ぎだされる空間だった。また仏のサロン文化とは異なり「女人禁制」で、男たちの「避難所」となる小さな「社会」を形成した。
— yuki (@yk17859713) 2017年1月26日
ブーアスティン『幻影の時代』東京創元社、1964年
— yuki (@yk17859713) 2017年1月26日
「疑似イベント」
成功した記者とは事件がなくてもニュースを見つけ、合成できる人間である。彼らは、誰もが世界が与える以上のものを期待している中、それに応える「幻影(イメジ)」を提供し、合成的で新奇な「疑似イベント」を製造する。
宮島 喬(2004)『ヨーロッパ市民の誕生』岩波新書
— yuki (@yk17859713) 2017年1月27日
2000年までのEC・EU諸国における移民問題や国籍問題について詳しい。ドイツの例も多数挙げられているが、中心はフランスの事例。著者が独自に聞き知った当事者や関係者らのエピソードも交じり、非常に具体的。
デイヴ・エガーズ(2014)『ザ・サークル』早川書房
— yuki (@yk17859713) 2017年1月27日
情報社会がディストピアになっていく物語。登場するのは、ほとんど全て今実際身の回りにある情報技術。情報の過剰な公開は、人間同士の親密性を促進させるどころか減退させる。人間の特性としての知性は、知らないということによって生じる。
川村二郎(1988)『白夜の廻廊』岩波書店
— yuki (@yk17859713) 2017年1月27日
世紀転換期のドイツ語圏文学に大きな影響を与えたウォルター・ペイターを中心に、ホーフマンスタール、カスナー、ボルヒャルト、ゲオルゲなどを扱っているエッセー集。当時の文学がどのような影響関係のもとにあったか展望を掴むのに良い文献だと思う。
ヘレーン・ハンフ(1984)『チャリング・クロス街84番地』中公文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年1月28日
「すわり込んでちゃだめよ、何か本を見つけに行ってよ」。この言葉に何か駆り立てられて、また古本を漁りに行ってしまう。本に対する深い愛と、相手を思いやる愛情が、古書をめぐる手紙のやり取りの中に存分に感じられる名作。
外山滋比古「「読み」の整理学」(ちくま文庫)
— yuki (@yk17859713) 2017年1月29日
既知情報を読むアルファ読みと未知のことを読むベータ読みに分け、後者の重要性を論じている。ベータ読みは決して、未知を深く理解することで「正解」を求めて終わる読書ではなく、むしろ未知を埋める自由を繰り返し味わう読書の方法だといえる。
神林長平(2015)『絞首台の黙示録』早川書房
— yuki (@yk17859713) 2017年1月29日
登場人物間の時間軸が交わっては離れ、離れた瞬間その実在すら怪しくなるような叙述になっている。物語の読解が物語の構築に直結する仕組みになっており、読者もそこに参加させられるので、自分も不安定であるかのような感覚におそわれて、面白い。
出久根達郎(2003)『古本夜話(ちくま文庫)
— yuki (@yk17859713) 2017年1月29日
古書にまつわるエッセイ集。中身の薀蓄もさることながら、本というモノ自体に込められた逸話が、豊かな筆致で描かれる。心温まる話も、虚実が混淆しつつ展開する不思議な話もあって実に多彩。特に「回」はホフマンの短編を読んでいるようで好きな話。
海野弘(1994)『書斎の博物誌』PHP研究所
— yuki (@yk17859713) 2017年1月29日
書く・読む空間と、それを構成しているモノへと焦点を当て、文学や映画を再読していく手法は鮮やか。アイディアの発想の仕方や連想の仕方がすごく面白い。作家の着想の現場に少し触れられた気がした。自分の好きな作家の書斎が気になってくる。
ヒース/ポター(2014)『反逆の神話』NTT出版
— yuki (@yk17859713) 2017年1月30日
消費主義に反抗するはずの文化政治がむしろ消費主義を強化するという矛盾を批判する。「対抗文化」を一般化しすぎているかもしれないが、文化政治が体制を強めてしまうとしたら、68年以降の左翼にできることとは何か、考えさせられて興味深い。
アイヒンガー『より大きな希望』東宣出版
— yuki (@yk17859713) 2017年1月30日
ユダヤ人少女エレンの体験が彼女の目線から、しかしアイヒンガー独特の詩的表現による世界観とともに描出される。史実に基づきつつ、宗教やメルヘン的モティーフも散りばめられ、一方で別世界の出来事のように、他方驚くべきリアリティを付与されている。
米澤穂信(2015)『王とサーカス』東京創元社
— yuki (@yk17859713) 2017年1月31日
報道における真理の追求と伝達。知るという欲求のエゴイズムを自覚して尚書き続けること。確かに知ることは不可避的に物語を作り出す。取り上げられるのは有限で、その外にある〈物語〉は省略される。しかし書くことで生じる変化の可能性こそが問題。
スローン(2014)『ペナンブラ氏の24時間書店』東京創元社
— yuki (@yk17859713) 2017年1月31日
「読書好きに贈る」というコピーに引かれる。ヒエログリフのモティーフにデジタルメディアが絡まり合う。そこから生じる人間の知識の伝達という問題。TRPGのお約束を思わせる場面が散りばめられていて、楽しくテンポ良く読める。
生松敬三(1984)『書物渉歴 1・2』みすず書房
— yuki (@yk17859713) 2017年2月1日
エッセイは軽妙でオチまであって面白い。書評は要点をさらっと紹介しつつ、読みたくなるような書き方。解説も平易かつ詳細でわかりやすい。いわゆる「哲学」を批判し、専門的タコツボ化へと抵抗する「わかる言葉」で書かれた哲学思想。
宮内悠介(2015)『エクソダス症候群』創元日本SF叢書
— yuki (@yk17859713) 2017年2月2日
現在の医学が野蛮ではないという保証は無い。患者と医者の信頼関係と、村人と呪術師の関係性のあいだの相違とは何か。SFが想像≒創造するユートピア/ディストピアが、現在を反省する最良の手段となる好例として面白く読めた。
チャペック(1920)『ロボット/R.U.R』岩波文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月2日
「ロボット」という言葉を作り出した作品。人間と機械人形の境界の問題が、人間を取り巻く様々なテーマと結びつく。労働、人権、階級、性差、美・芸術、愛、など枚挙に暇がない。機械人形の登場は人間の条件を浸食するのかもしれない。
高田大介(2016)『図書館の魔女』講談社文庫、第一巻
— yuki (@yk17859713) 2017年2月2日
図書館の構造と言葉・文・本の不可逆的な線条性との対応についての会話場面に興味を持つ。言葉は後戻りできず、前から後へ進むのみ。言葉の集積である図書館の構造もまた、その不可逆性に従うことは不思議でなく、一方通行しかできない。
書名を忘れてしまいました。
— yuki (@yk17859713) 2017年2月3日
種村季弘(1986)『ぺてん師列伝―あるいは制服の研究』河出文庫
図書館の魔女の影響…というわけでもないがレファレンスブックスの三訂版があったので買ってパラパラ。調べ方って色々あるんだと改めて実感。
— yuki (@yk17859713) 2017年2月3日
レファレンスブックス―選びかた・使いかた 日本図書館協会 https://t.co/rO10jS3EVU @amazonJPさんから
佃実夫(1977)『文献探索学入門』思想の科学社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月4日
レファレンスサービスについてまとめられた入門書。インターネット以前がもはや想像しづらくなった今こそ書籍資料のたどり方は必要。そこには「定石」があり、ネット検索のように直線的・単線的ではなく、紆余曲折しつつも包括的・複線的。
ミラー(2008)『リズム・サイエンス』青土社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月4日
DJスプーキーとして活動するミラーは研究者でもあり、自らの音楽的実践をテキストで表すことに挑戦する。彼にとって書くことはDJの実践と通じている。取り入れ、つなぎ、新たな組合せを模索し、創造する営み。DJCD付で音と合わせて楽しめる。
山口昌男(1978)『歴史・祝祭・神話』中公文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月4日
祝祭空間と象徴的な犠牲の論理が、人間社会の秩序や活力の維持のために重要な役割を果たすことを明らかにしている。ポトラッチに代表される浪費と破壊の原則は、祝祭においても見られる。祝祭空間では日常的な言語や経済の交換体系は停止される。
バイヤール(2016)『読んでいない本について堂々と語る方法』ちくま学芸文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月4日
まだ読んでないが序文でもう素晴らしい。「読み終わって」も読書ノートをつけようとして全く把握できてないことに気づく。「読む」はいつ終わるんだろうか。どう「読まない」ことが説明されるか楽しみに読みたい。
吉見俊哉(2012)『「声」の資本主義』河出文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月5日
「電話・ラジオ・蓄音機の社会史」と副題にもあるように、メディアにおける技術的革命をもたらしたそれぞれの発明が、その草創期に実際どのような形で社会に受け容れられていき、また逆に、社会のあり方を編成しなおしたかを明らかにしている。
紀田順一郎(1994)『図書館が面白い』筑摩書房
— yuki (@yk17859713) 2017年2月5日
専門図書館や、先進的な取り組みをしている図書館の成立までの経緯を、エピソードも交えて物語る。大宅壮一が稀代の「メモ魔」だったことなど興味深い。膨大な情報の分類整理が組織化され、一つの「図書館」施設へと育っていく様子が面白い。
柄谷行人(2015)『世界史の構造』岩波現代文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月5日
「こういうことであれば、こうなのではないか・・・?」と淡々と、しかし鋭く少しづつ深められ、展開されていく議論に引き込まれる。問題提起と結論が明瞭で、数々の例証が補われていく。縦横無尽に文献を渉猟し、編みあげられていく理論体系。
生松敬三(2000)『二十世紀思想渉猟』岩波現代文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月6日
「読書日記」から始まる記述が自由に軽やかに結び付けられ、生松というフィルタを通して20年代ワイマール期の思想潮流が浮かび上がる。回想録から出発することが多いせいか、思想家の周辺人物にも言及され、当時の状況が明瞭に描き出される。
『図書館の魔女』講談社文庫、第二巻
— yuki (@yk17859713) 2017年2月6日
図書館というテーマから入ったが最早それとは関係なく引き込まれる。三国志好きにはたまらない。しかしあえて読書と関連付けるとすれば、将棋の手筋で人を読む際に、選択されなかった手を読む場面と、断片から大きな物語を作り真実に迫ろうとする営為に見出せる。
『社会学文献事典』弘文堂
— yuki (@yk17859713) 2017年2月6日
読書猿さんでも薦められているが、3800円で買うと世界が変わるレベル。文献の要約解題をパラフレーズして勉強も良し。もう少し頑張って調査する際の入口にしても良し。物の見方が一気に広く深くなる事項索引も秀逸。https://t.co/GQH70C66pw
ワッツ(2017)『エコープラクシア〈上〉』創元SF文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月7日
知覚の拡張などにより全く異なる「現実」認識の仕方を持つ超人達に対し、「旧弊」な人間の現実モデルが提示される。神は不整合な現実を正すのか、それとも不整合な現実こそ正しく、神はそれを侵食するバグなのか。信仰の問題が展開される。
種村季弘(1980)『ヴォルプスヴェーデふたたび』筑摩書房
— yuki (@yk17859713) 2017年2月7日
二十世紀初頭、ブレーメン北東ヴォルプスヴェーデの芸術家コロニー「バルケンホーフ(白樺の家)」には、フォーゲラー、モーダーゾーンの他、一時期リルケも滞在していた。本書はフォーゲラーを中心とした芸術・思想史である。
パワーズ(2013)『幸福の遺伝子』新潮社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月7日
ある事件がきっかけで「幸福の遺伝子」を持つ稀な存在であることが発覚した女性。メディアに追い立てられ、虚像が際限なく膨張していく。多くの人が自分を「不幸」と感じる社会では、幸福が「異常」と捉えられてしまうという皮肉を鮮やかに描き出す。
種村季弘(1979)『詐欺師の楽園』白水社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月8日
種村は、詐欺を「記号体系の裏をかくこと」として読み解いていく。詐欺師はそのような記号体系やシステムを、小規模かつ個人的な富や名声を裏付けるものとして構築する。そして最終的には、その構築されたシステムもろとも、自分自身も消滅させてしまう。
生松敬三(1992)『ハイデルベルク:ある大学都市の精神史』講談社学術文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月8日
14~20世紀前半にかけてのハイデルベルクの城と大学の長い歴史を、そこに関わった数々の知識人たち同士の交流の歴史として描き出す都市の文化史。特に18世紀学生運動とヴェーバー・クライスに関する記述が面白い。
日高敏隆(1977)『動物にとって社会とはなにか』講談社学術文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月9日
動物生態学を通した社会批判を軽妙な文体で展開。個体数調整としての疫病・戦争・少子化は、自然的・本能的要因に加え、極めて社会的な現象でもある。動物としての人間がもつ本能は、社会的に構築されているという指摘は興味深い。
『エコープラクシア〈下〉』
— yuki (@yk17859713) 2017年2月10日
あらゆる思惟が意識的選択ではなく、計画の一部として、選択しないことが不可能なためになされた選択でしかない。しかも実際に「計画」があるのかすら不明な状況。膨大な科学論文による裏付けと独創的な発想によってSFとして現在に蘇った決定論論争として読める。
ハインリヒ・ベル(1988)『ハインリヒ・ベル短篇集』岩波文庫(赤452-1)
— yuki (@yk17859713) 2017年2月11日
戦後ドイツ文学を代表する作家の一人であるハインリヒ・ベル(1917‐85)の短編集。著者の従軍体験にももとづきつつ、戦中・戦後の人々の生活や愛の一場面を切り取った、初期短篇を中心とする20篇。
紀田順一郎(1980)『黄金時代の読書法』蝸牛社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月11日
人の一生の中で「読書の黄金時代」はあるのか。紀田は「黄金時代」が万人共通かつ同時期にあるわけではないという。青年、中年、老年、それぞれにふさわしい読書がある。座右の書、そして臨終の書に出会うため、好きな時、楽しむために読む方法論。
谷口吉郎(2015)『雪あかり日記/せせらぎ日記』中公文庫プレミアム
— yuki (@yk17859713) 2017年2月12日
日本大使館の新築設計のため1938年第三帝国下のベルリンに派遣された建築家谷口吉郎による、メモをもとに帰国後執筆された滞在記。記憶や体験から語られる生々しい大戦前夜の記録。 滞在初日が「水晶の夜」事件当日。
ウォルター・M・ミラー・ジュニア『黙示録3174年』創元SF文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月12日
3部構成で長大な時間軸を一つのストーリー軸と設定に沿ってまとめ上げ、当時目前に迫っていた危機に対する批判や風刺が散りばめられており、作者の強いメッセージ性が込められている。非常に濃密な作品。
エヴンソン(2014)『遁走状態 』新潮社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月12日
正常と異常の撹乱と言うと月次だが、狂わされるのは読者の方。語り手の視点に同調しても、それが異常だと気づいても、どちらの立場に身を置いても双方の現実が共に狂って見えてしまうような、だまし絵を見た時に抱く目眩の感じに近い。強烈な読書体験。
『世界一美しい本を作る男:シュタイデルとの旅』(2015)
— yuki (@yk17859713) 2017年2月13日
ドイツ・ゲッティンゲンの出版社Steidlの社長シュタイデルを追ったドキュメンタリー映画で、DVDブックとして販売された。彼はアーティストたちと綿密な議論を重ね、紙質、判型、構成を納得いくまで作り直し、練り上げていく。
ヴォルフガング・シヴェルブシュ(1988)『楽園・味覚・理性 : 嗜好品の歴史』法政大学出版局
— yuki (@yk17859713) 2017年2月13日
嗜好品が及ぼす化学的作用は、精神的・文化的・政治的次元で、既に人間の身体へと刻み込まれた行動様式を補完する。それが愉悦である程、嗜好品はますますしっかりと私たちを日常生活へ繋ぎとめる。
種村季弘(2003)『山師カリオストロの大冒険』岩波現代文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月14日
18世紀欧州を股にかけ、医師や霊媒師と化し、富めるものから取り、貧しき者に分け与え、錬金術実験と称して費用を騙し取る…。種村独特の「詐欺師観」はカリオストロにも見出される。彼に騙される者は、己自身の欲にも騙されている。
フリオ・リャマサーレス(2017)『黄色い雨』河出文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月15日
「沈黙が砂のように私の目を覆い尽くすだろう。」
裏表紙に書かれたこのラインに出会った時、正直鳥肌が立った。これほど悲しい物語なのに、なぜか読後感は清々しい。作品全体を包む静寂と沈黙からは、清涼という言葉が真っ先に思い浮かぶ。
種村季弘(編)(1985)『ドイツ幻想小説傑作集』白水社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月16日
18世紀から現代までの幻想文学18篇のアンソロジー。啓蒙の光が消失させたかに見えた闇の中の怪奇幻想はむしろ明るい世界へ溢れ、常にそこにあるものとなる。お気に入りはジャン・パウルの「機械に憑かれた男」。IoTとの関連性。
渡辺靖(2015)『〈文化〉を捉え直す』岩波新書
— yuki (@yk17859713) 2017年2月17日
文化人類学者で文化政策顧問や外部専門家などとして政府機関やNHKなどとも関わってきた著者による〈文化〉政策と、〈文化〉言説を巡るフィールドワーク。大文字の「文化」を語れなくなった後にいかに〈文化〉について考え、語り、実践できるか。
シーラッハ(2016)『テロ』東京創元社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月17日
テロを扱った戯曲。160名と7万人、緊急避難は大規模テロにも適用されるべきか。法はそれをどう裁くことができるか。そしてわれわれはどうそれを裁くことができるのか?人が人を裁くことの困難さ。https://t.co/y4I0mEcJt8
ワッツ(2013)『ブラインドサイト』創元SF文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月19日
吸血鬼、四重人格者、機械化人間、未知との遭遇と盛りだくさんだが、意識の問題が中心。それだけでなく読む行為が前提とする「想像」と「共感」の問題としても読め、SFとしても良質で面白い。https://t.co/VB8FQ0EgtO
池内紀(2005)『自由人は楽しい』NHKライブラリー
— yuki (@yk17859713) 2017年2月19日
モーツァルト、ゲーテ、グリム兄弟、ロスチャイルド家、トロヤ遺跡発掘のシュリーマン、トーマス・マン、ケストナー、ヘッセについてのラジオ講演。各人物の伝記を独特の切り口から語る。https://t.co/mIzdXKLpfI
堀江敏幸(2016)『その姿の消し方』新潮社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月20日
短編集だが全体を通して一人の詩人を探すというテーマでつながっている。絵葉書の裏に書かれた詩、しかもそれは複数の絵葉書に書かれていた。風景や宛名を手がかりに彼の記憶と姿を蘇らせようとする。https://t.co/T7ZB00mUj4
脇圭平(1973)『知識人と政治』岩波新書
— yuki (@yk17859713) 2017年2月21日
トーマス・マンとマックス・ヴェーバーをつなぐ…どころかワイマール共和国からナチズムへの「頽落」を知識人たちの共和国に対する態度や批判から説明し、考える上での重要な論考。しかもわかりやすい。https://t.co/wVvRxNA7Rp
加藤典洋(2015)『戦後入門』ちくま新書
— yuki (@yk17859713) 2017年2月21日
文体が口語調の講義のようで繰り返しも多くポイントも強調される。高校生にも読んでほしいというだけあり工夫が凝らされている。国連中心主義に立脚した平和主義と対米従属外交からの脱却が主張の中心。https://t.co/gQw0OQCG1i
小川哲(2015)『ユートロニカのこちら側』早川書房
— yuki (@yk17859713) 2017年2月22日
情報を売買することで保証金を得られる「情報銀行」システムにより、労働することなく「自由に」生活できる「アガスティアリゾート」を舞台とした短編集。登場人物はその住民や外部の人々。https://t.co/HqQTayZxhV
宮内悠介『盤上の夜』東京創元社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月24日
設定のグロテスクさに負けそうだったが、微に入り細を穿つ記述と展開に引き込まれた。棋士たちに盤面が宇宙のようにみえるという話は聞いたことがあるが、サイバネティクスとそれを融合させるアイデアには感服した。https://t.co/hFY7beyX93
森銑三 /柴田宵曲(1997)『書物』岩波文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月24日
二人の近世史家による書物についての書物。書物を取り巻く環境を項目として、それぞれが書物と取り結ぶ関係について書かれている。例えば味覚や辞書、銀行預金など。突飛な結びつきが非常に面白い。https://t.co/UP6oLGahPT
三上延(2017)『ビブリア古書堂の事件手帖7』
— yuki (@yk17859713) 2017年2月25日
このシリーズに出会えて本当に良かった。本や古書は元々好きだったが、そこに物語や歴史、人との関わりを感じられるようになった作品。本が好きでまだ未読の方がいるならば、ぜひ一読してほしい。https://t.co/9F4HzSp4GH
高階秀爾(1987)『ルネッサンス夜話』河出文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年2月26日
メディチ家や、スフォルツァに代表される当時の傭兵たちの財産・給料・仕事ぶりなど、無名の一般人の手記や帳簿などを読み解きつつ明らかにしていく。
2015年に平凡社ライブラリーにて復刊。https://t.co/KpaBF4Vyco
種村季弘 (1979年)『黒い錬金術』桃源社
— yuki (@yk17859713) 2017年2月26日
黒い太陽とその復活という錬金術を支えていた原理。土星信仰において、黒い太陽は抑鬱の象徴である。黒は腐敗を表し、死を意味する。
1991年白水Uブックスにて復刊。https://t.co/AfPUUt9kUL
清水幾太郎(1972)『本はどう読むか』講談社現代新書
— yuki (@yk17859713) 2017年2月27日
著者自身の体験も交えた読書論で、非常に読みやすい。読む速度の重要性や書き込みの仕方、借りるよりも購入することの推奨などについて、軽妙な文体で書かれている。https://t.co/vAN6TRhlSb
海野弘(1980)『空間のフォークロア』駸々堂出版
— yuki (@yk17859713) 2017年3月1日
建築を人間の身体によって作り出される「生きられる空間」として論じ、祝祭空間などの外的な公共空間(広場、公園、道路など)が演劇空間へと編成される過程を分析する。https://t.co/2Iki0HVx8M
梅田卓夫(2001)『文章表現:四〇〇字からのレッスン』ちくま学芸文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年3月1日
作文講座での課題や回答例で、発想を形にする仕方を実践的に示している。四百字すら埋まらないという考え方は、書く行為を量的に捉えすぎているということがよくわかる。https://t.co/YBOb5mi8yT
米澤穂信『真実の10メートル手前』東京創元社
— yuki (@yk17859713) 2017年3月2日
表題作を含む6篇。太刀洗万智がジャーナリストとして関わった事件を、彼女以外の視点から描く。「外国語で話している前提の日本語」のぎこちなさが絶妙に表現されている話が個人的に面白かった。https://t.co/WYVDR3TvIG
西垣通(2013)『集合知とは何か:ネット時代の「知」のゆくえ』中公新書
— yuki (@yk17859713) 2017年3月4日
非常に軽妙な文体で、3.11時の原発問題やWeb2.0などの具体的事例と結びつけつつ、ITインターフェイスによって生じるはずの「集合知」について詳説している。https://t.co/lYY9Myz97C
ブライアン・エヴンソン(2016)『ウインドアイ』新潮社https://t.co/WIGmKz2onR
— yuki (@yk17859713) 2017年3月6日
自明の前提が転倒され、0から奇妙な世界が立上がる。だが『遁走状態』では根底から揺さぶられる感覚が小気味良かったのに対し、怪奇小説的な後味の悪さとショックが小出しになった印象。
チャールズ・ブコウスキー(2016)『パルプ』ちくま文庫https://t.co/Iw6iJQHsOt
— yuki (@yk17859713) 2017年3月7日
痛快爽快。探偵ものだが、事件の解決が消極的に行われていく。何もしてないのに、周りでコトが起こっていく。意味ありげなことも言うけど、よく考えると何も言ってない。謎のカッコよさ。
井上真琴(2004)『図書館に訊け!』ちくま新書
— yuki (@yk17859713) 2017年3月8日
本を借りるだけでなく、調べ、情報を入手し、考えるための施設としての図書館の利用法を、非常に丁寧に解説してくれている。図書館はネットや新古書店で入手可能な情報を補う重要な機能を持つ。https://t.co/Mid2IhrVAO
マーガレット・アトウッド(2001)『侍女の物語』ハヤカワepi文庫https://t.co/jq4oAJWRSs
— yuki (@yk17859713) 2017年3月11日
キリスト教原理主義者によるクーデターによって突如成立した国家で、司令官の子を産むことだけが唯一の役割とされた「侍女」の視点から語られるディストピア小説の代表作。
種村季弘(1986)『書物漫遊記』ちくま文庫https://t.co/LPTqNwLEkj
— yuki (@yk17859713) 2017年3月12日
一風変わった「読書案内」。単なる書評ではなく、その本の主題と関連付けられたエッセイ集。
岡本裕一朗(2015)『フランス現代思想史:構造主義からデリダ以後へ』中公新書
— yuki (@yk17859713) 2017年3月14日
レヴィ=ストロースの「構造主義」からデリダ死後の「ポスト・ポスト構造主義」までコンパクトにまとめられている。また関連ブックガイドとしても大変有用な一冊。https://t.co/x6KXRKZukG
花村太郎(2015)『知的トレーニングの技術』ちくま学芸文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年3月15日
「考えることは、身体的な行為であり自己との対話だ」。知的生産という精神的営為を身体的な技術や空間に基づく行為としても捉え、実践的な方法論にまで踏み込んで詳説している。https://t.co/EJlYQDZgmu
米澤穂信(2013)『折れた竜骨』創元推理文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年3月15日
魔法が存在する中世イングランドが舞台。特殊な設定だが、その内実はこの世界ならではの論理が巧妙に絡み合う本格的なミステリーである。世界観、ストーリー、人物描写の全てに引き込まれる。https://t.co/56gIxoo63R
種村季弘(1985)『アナクロニズム』河出文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年3月17日
アクチュアルな社会問題や現実を扱う書籍に溢れる風潮に抵抗し、あえて「死臭漂う」ような時代錯誤を、ということで始まったユリイカでの連載の書籍化。https://t.co/wbcYeQoGj5
クライスト(1951)『O侯爵夫人』岩波文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年3月19日
表題作を含む7本の短篇。
彼の短編小説の構成や人物描写は、非常に現代的でリアリスティックである。1800年初頭に書かれたとは思えないような印象で、ミステリーのように読めるのではないか。https://t.co/RtZ3Rsmfc9
待鳥聡史(2015)『代議制民主主義:「民意」と「政治家」を問い直す』中公新書
— yuki (@yk17859713) 2017年3月21日
「民主主義」という言葉は状況に応じて玉虫色に使用されがちだが、その際欠けてしまうのは「委任と責任の連鎖」という視点だ、と著者は指摘する。https://t.co/mc7efPyx4v
中村文則(2014)『教団X』集英社https://t.co/XBls1V8Wsw
— yuki (@yk17859713) 2017年3月22日
カルト教団によるテロ計画を巡って交錯するそれぞれの組織の思惑と、その中で翻弄される4人の男女の物語。それが骨子となる筋ではあるのだが、独白による宇宙観・哲学・政治思想が多くを占めている。
紀田順一郎(2002)『デジタル書斎活用術』東京堂出版
— yuki (@yk17859713) 2017年3月24日
ネット活用など昔のPCの話かと思いきや、椅子や机、紙など「書斎」に欠かせない周辺的考具についての話が満載。書斎を持つという夢を掻き立てられる。https://t.co/2Y0LkO2elC
東浩紀/大山顕(2016)『ショッピングモールから考える』幻冬舎
— yuki (@yk17859713) 2017年3月26日
若者や「無法者」に「開かれた」空間としての「ストリートの思想」に対し、むしろそこから「排除」されてしまう人達(家族連れなど)に開かれた空間としてのショッピングモール。https://t.co/coH3jY5Xbb
ベン・ラーナー(2017)『10:04』白水社
— yuki (@yk17859713) 2017年3月30日
「詩人を通して語られる、『世界が組み変わる』いくつもの瞬間」という帯に惹かれ購入。しかしその変化は決して劇的・空想的・突飛ではなく、周囲の日常世界をまさに「ほんの少しだけ」異なるように見る/見せるように描かれている。
ロバート・F・ヤング(2017)『時をとめた少女』早川書房
— yuki (@yk17859713) 2017年3月31日
表題作を含む7篇。「愛はひとつ」など『たんぽぽ娘』でもおなじみの時間+恋愛の物語はさすがといったところ。「真鍮の都」はアラビアンナイトと未来世界を結合させたスリリングな冒険譚。SFだが恋愛ものという、色々楽しめる短編集。
アイザック・アシモフ(1976)『わたしはロボット』創元推理文庫
— yuki (@yk17859713) 2017年4月3日
有名な「ロボット三原則」の元ネタ。人間に限りなく近づくにつれ「それ以上の」ものになっていくロボットを巡る9篇。ロボットを題材に深い人間観や社会観が展開されていく。https://t.co/IdMqEpNStJ
宮内悠介(2017)『カブールの園』文藝春秋
— yuki (@yk17859713) 2017年4月3日
アメリカと日本の混淆。日系二世・三世として生きること。多民族国家の理念と、人種差別問題という現実が主題となった二作品。 ルーツの問題に直面し、戸惑いつつそれぞれの答えを模索していく。https://t.co/JDbvBF8tnu
G・ウィロー・ウィルソン(2017)『無限の書』東京創元社
— yuki (@yk17859713) 2017年4月5日
中東を舞台とした幻想小説。物語とプログラミングコード、現実と異界の間を行き来しながら、主人公アリフは古写本『アルフ・イェオム』の語る「知識」に迫っていく。https://t.co/PTo5M5abvA